山のお正月 その6

年が明けてからの1週間も、村はとても静かです。都会に出ていた子供や孫たち、それに、普段はいない学齢期の子供たちもいて(村に小中学校はないので、みな町の学校に出て、ほとんどが寮生活を送っています)、村の人口は格段に多くなっているのですが、寒い…

山のお正月 その5

「新年快楽!」(中国語で、明けましておめでとう) 2月19日が、今年の春節、つまり正月初一でした。除夕の深夜からチラチラと小雪が舞い出し、春節の朝は中くらいの雪化粧です。乾燥した黄土高原ですが、雪はけっこう降ります。ただ、日本のような大雪にな…

山のお正月 その4

それぞれの家の庭にも土地神様が祀ってあるので、それにもお供えをしたり、飾りつけをします。 これは小麦粉で作った「花花」(hua hua)というお供え物で、日本の小さな鏡餅のように、敷居の上とかカマドの上とか、いろんなところに置きます。 魚の準備をし…

山のお正月 その3

大晦日のことは「除夕」(chu xi)といって、今年は2月18日でした。この日の午後になると、村人たちはいっせいに対聯などの飾りつけをします。小麦粉を煮て糊を作って貼るのが基本です。これらは、日本のしめ飾りのように、外す日が決まっているわけではなく…

山のお正月 その2

迎春といっても田舎のことですから、特別に派手なものを買い揃えるわけではありません。ただし、絶対に必要なものは、「対聯」(dui lian)という紅い紙におめでたい文字を書いたもので、これを門や窓の両側に貼ります。必ず1対です。紅いちょうちんも最近は…

山のお正月 その1

ちょっと遅くなりましたが、みなさん明けましておめでとうございます。え?ちょっとばかりじゃないだろうって。いえいえ、こちら中国では、明日3月5日の元宵節までがお正月なのです。みなさんもご存知のように、中国では、農暦(旧暦)で新年を祝います。今…

なつめものがたり その14

12月6日午後、なつめはついに成田空港に到着しました。むつみ高校のスタッフが迎えに来てくれ、中央道を一路松本へ。途中のサービスエリアで、初めて日本の“土”を踏ませましたが、きっとなつめも柔らかく感じたことでしょう。その後、紆余曲折がありましたが…

なつめものがたり その13

2013年11月29日、いよいよなつめが黄土高原に別れを告げる日がやってきました。ちょうど大同まで車で行く人が見つかったので、諸経費を私が負担するという条件で北京まで送ってもらうことになり、午前8時の出発です。前夜は最後だからと、ゲンワン夫婦の家に…

なつめものがたり その12

それからの半年間は、これまでにも増していろいろ気を使いました。これだけの手間ヒマお金をかけて、何事かあったらもう、泣くに泣けないのはおわかりいただけると思います。病気をしないように、怪我をしないように、犬同士のケンカもあるし、農薬や殺鼠剤…

なつめものがたり その11

1ヵ月後の5月14日、初回と同じ方法同じコースで北京に向かいました。動物病院は市内北部にありましたが、幸運なことに、高速道路を出て、そのまま首都高速に乗り換えて、まさにその高速沿いにあったため、最短の時間で行くことができました。これがもし、中…

なつめものがたり その10

あけて13年4月8日、いよいよ第一回目の接種をするために北京に向かいました。まずは、磧口の顔見知りの運転手に頼んで、太原まで送ってもらい、私はホテル泊まり、なつめはペットショップに預かってもらいました。あとから思い返せば、ここを探し出すまでに…

なつめものがたり その9

私となつめの平和な暮らしに突如暗雲がたちこめ始めたのは2012年のことです。4月に石原東京都知事が尖閣諸島購入の計画を発表し、9月には、時の野田政権が国有化に踏み切ったからです。 私はこのときまで、なつめを日本に連れて帰ることは一度も考えたことは…

なつめものがたり その8

なつめは毎日何を食べていたかというと、基本的には米。ごはんに残り物のおかずやふりかけなどをかけてあげていました。私が肉を食べないので、かつお節の粉とか魚の缶詰の残り汁とか、たまにはゆで卵、ソーセージなどです。だから肉よりむしろ魚系が好きみ…

なつめものがたり その7

車で取材に行くときなどは、なつめも連れてゆきました(ア、この車じゃないですよ)。写真は、磧口からずっと山の中に入った中興社という村ですが、そこに日本語を話す老人がいると聞いたのででかけました。会ってみると、“話す”というのは大げさで、単語を…

なつめものがたり その6

2005年に北京からこの地にやってきて、その後5年ほど、私は村々を廻って老人たちの記憶を聞き取り続けました。訪問した村は100を越えます。取材した人は2010年の段階でおよそ300人。公共交通機関などもちろんないので、徒歩、あるいは村人のバイクに乗せても…

なつめものがたり その5

ゲンワンの家も1年で引っ越しました。天井からぽろぽろ土くれが落ちてくるようになり、寝ている頭の上や、PCのキーボードにも降りかかるようになったからです。今度はイージャオの家ですが、ここは空き家になっていたので、私となつめだけの暮らしになりまし…

なつめものがたり その4

賀家湾で最初に住んだジーチャンの家は小学校のすぐ近くにありました。当時なつめは繋いで飼っていたのですが、“悪ガキ”が学校への行き帰りにのぞいては、棒でつついたりして虐めるので、半年くらいで引っ越しました。なつめは今でも小さな子によく吠えるの…

なつめものがたり その3

それからしばらくして、私となつめは、現在暮らしている、賀家湾(ハージャーワン)という村に引っ越しました。この村は、かつて日本軍によって274名の村人が虐殺されたという凄惨な歴史を持ち、私はその後初めて村に入る日本人です。もちろん私は、意識して…

なつめものがたり その2

なつめが私のところにやって来たのは、2007年12月7日のことです。私はその頃、近隣の村々を廻って、日中戦争当時の記憶を持っている老人たちを探して、聞き取りをしていました。この日は、工農庄という村に住む80歳の薛老人を取材したのですが、帰りがけに、…

なつめものがたり その1

この「山の分校」のタイトルバックの右の方に一匹の犬が写っていますが、名前は「なつめ」といって、実はいま、むつみ高校とスタッフのヨネさんの家を行ったり来たりしています。そろそろ1年になります。なぜ中国の黄土高原に居るはずの犬がむつみに居るのか…

新しい旅の始まり

長かった旅ももう最終ラウンドに入りました。到着そうそう「もう帰りたい」と泣いた子や、夜な夜な国際電話にしがみついていた子もいましたが、1週間もたつとすっかり“中国通”になって、しみじみ名残を惜しむ子、すでに中国留学を決心している子など、毎年さ…

日本人の証明

翌日私たちは、市内に住むハオばあちゃんを訪問しました。彼女のおじいちゃんが富士見村から満蒙開拓団の一員として、木蘭というハルビン郊外の村に入植したという人です。終戦時3歳で、父親はすでに死亡、母親と生き別れになって、中国人の養父母に育てられ…

731館長さんと懇談

翌日は731部隊罪障陳列館に向かいました。 実はこれは去年も感じたことなのですが、ここの展示の仕方は、最初の頃とかなり変わってきています。私が最初に訪れたのは、まだむつみ高校が開校する2年ほど前で、そのときには資料館はまだありませんでした。731…

撫順からハルビンへ

撫順に3泊した後、一行はハルビンに向かいました。 撫順北駅。まだ工事中なのにすでに利用されています。日本では考えられないことですが。。。 まずは瀋陽駅まで。満鉄が作った瀋陽駅も後方に大きなドーム型の新駅舎が完成して一体化しています。日本人が作…

新屯のおばあちゃん

翌日は、撫順戦犯管理所を見学して後、近くで車を3台チャーターして、去年訪れた龍鳳炭坑竪坑櫓へ行きました。満鉄の技術で造ったものです。私個人的には、この竪櫓が大好きで、今年も会えたことは幸いでした。この櫓は、地下にまっすぐ638メートル掘られて…

撫順炭坑

毎年同じコースではありますが、今年の撫順炭坑はとりわけ天候に恵まれ、はるか遠くまで見渡すことができました。ここは西露天といって、東側にももう一ヵ所、東露天という露天掘り坑があります。そして今年は初めて、この西露天のちょうど反対側に新しくで…

丹東から撫順へ

国境の街丹東に2泊して、国境沿いの道路を通って、瀋陽に向かいました。本来路線バスで行く予定だったのですが、休暇に入っていたため、瀋陽行きの切符が、なんと、15枚しか残っていなかったのです。私たちは総勢16人。さあ、どうしようといろいろ方法を考え…

大連から丹東へ

大連は中山広場の近くのホテルに1泊して、翌朝丹東に向かいました。この日、9月6日は土曜日で、かつ8日が中秋節のため、街は故郷へ帰省する人々でごったがえしていました。バスのチケットは4日にすでに購入していましたが、チケットがあるからといって、完全…

テラ・ツアー 大連

みなさんお久しぶりです。 今年もまた、恒例の「テラ・スコラ中国ツアー “満州”と国境をめぐる旅」がスタートしました。今回の参加者は、女性10名、男性3名+スタッフ2名+私で、合計16名。スリランカ籍ひとり、ブラジル籍ひとりを含む、日本語中国語英語信…

商品の波

広州白雲国際飛行場へ行ってみました。街の中心部から地下鉄で小1時間、なんと100円ちょっとで行けてしまうという、旅行者にとってはありがたい距離にあります。危険と隣り合わせということになりますが、終点のすぐ手前の駅まで、ごく日常的に利用している…