商品の波

広州白雲国際飛行場へ行ってみました。街の中心部から地下鉄で小1時間、なんと100円ちょっとで行けてしまうという、旅行者にとってはありがたい距離にあります。危険と隣り合わせということになりますが、終点のすぐ手前の駅まで、ごく日常的に利用しているだろうと思われる人たちが乗り降りしていました。

地下鉄駅の表示もいかにも漢字の国らしく、なかなか貫禄があって、いいもんだなぁと思いました(機場=飛行場)。もちろん普通のゴシック調の表示もありますし、アルファベット表示もありますが、これがまた広東語なのか英語なのかよくわかりませんでした。

改札口を出るとすぐに空港ターミナルで、他空港と比べてもアクセス通路が格段に短くて、大荷物抱えて行き来する旅行者にとってはとても便利です。では空港自体が小さいかというとそうではなく、ものすごく天井の高い巨大なターミナルビルです。ABCと3つの区域に分かれているのですが、それが井桁状の構造をしていて、北京空港のように一直線に端から端まで見通せないようなタイプではないのです。ロビーに入っている商店の数も少なく、出発ロビーには、待合のイスすらほとんどないのです。到着ロビーにはたくさんありましたが、考えてみれば、出発ロビーの人はすぐに搭乗ロビーの方に移動してしまうわけだし、あまり必要がないといえば、それも合理的ではあります。うまく説明ができないのですが、とにかく、使い勝手の良い空港だと思いました。

あたりをウロウロしていたら、ちょうど「ケニア航空」と「エチオピア航空」の搭乗手続きが始まったところでした。そして私は、ここでもう〜んと唸らされる光景に出くわしてしまったのです。





この手荷物の山の中身は疑う余地なく“衣料・繊維製品”でしょう。こういった、いわばプロの貿易商というような人々ではなく、目の覚める色遣いの衣装に身を包んだ、でっぷり肥った(アフリカなら)どこにでもいそうなおばちゃんや、ちょっと小遣い稼ぎにやってきたのさと、時間待ちにタップでも踏んでいるかのようなおっさんや兄ちゃんたちが、カウンター前に列をなしていたのです。

中国がアフリカ諸国との友好交流に力を入れている、というのは、もうずいぶん前から言われていることです。様々な問題点も時に顕在化しつつあるようです。アフリカ諸国との貿易額がどの程度のものかはわかりません。もちろんプロ同士の、私たちが直接目にすることのない商社間の取引も多いでしょうが、こういった商取引の原点のような光景を間近に見ていると、大型貿易よりむしろ、アフリカの人々を引き寄せる中国の力というか、もっというならば中華文明の底力のようなものすら感じて、私は人知れずう〜んと唸ってしまったのです。

今回は、関空→香港→広州と、いつもと違う遠回りのコースではありましたが、私が自分の眼で確認できたのは、まさに怒涛の如く押し寄せる商品の力だったように思います。俗に揚子江の北側は政治で治める国で、南側は商業で収める国だともいわれますが、今回ほどそれを実感したことはありませんでした。

そしてこの翌日、私は飛行機で太原に向かい、それからバスで離石へ。そして、翌々日、商品の波いまだ届かず、政治の風からも遠く隔てられた、黄土高原の“名もなき”小さな村の“分校”に帰ってきました。