なつめものがたり その4

賀家湾で最初に住んだジーチャンの家は小学校のすぐ近くにありました。当時なつめは繋いで飼っていたのですが、“悪ガキ”が学校への行き帰りにのぞいては、棒でつついたりして虐めるので、半年くらいで引っ越しました。なつめは今でも小さな子によく吠えるのは、その頃のトラウマが残っているのかもしれません。

その小学校もいまはもうありません。政府の方針で、近隣の村の小学校は3年前にすべて廃校になったのです。小学校があった頃は、村の人口が減少しつつあるとはいえ、それでもまだ比較的若い人たちが村で暮らしていたことになりますが、学校がなければ、学齢期になった子どもと共に、町に出るしか手がありません。雪崩打つような過疎化が進行するのも当然のことでしょう。


で、前の大家さんは犬好きではなかったので、今度は犬好きを条件に探してみつけたのが、ゲンワンの家でした。この家には猫もいたのですが、猫の方が一枚上手で、追いかけっこをしても、いつもなつめが負けていました。当地では、犬は番犬、猫はネズミ捕りで、両方飼っている家も多いのですが、みんな仲良く暮らしているみたいです。


大家さんはとてもなつめをかわいがってくれて、この頃には、私が日本に帰国するときには、なつめをもらってもらおうと決めていました。