なつめものがたり その5

ゲンワンの家も1年で引っ越しました。天井からぽろぽろ土くれが落ちてくるようになり、寝ている頭の上や、PCのキーボードにも降りかかるようになったからです。今度はイージャオの家ですが、ここは空き家になっていたので、私となつめだけの暮らしになりました。気兼ねしなければならない人もおらず、おまけにちょうどはずれの位置にあったヤオトンだったので、のんびり自由にのびのび暮らすことができました。

悩みは、ネズミがものすごく多いことでしたが、なつめが追いかけ回すので、奥の方でガサゴソ、チューチューいっていても、あまり姿を見せることはありませんでした。好奇心旺盛なので、ネズミが逃げ込んだ穴の前で、じっと何時間も出てくるのを待っていたりします。


この年、2009年はほんとうによく雪が降りました。界隈では、夏場の直射日光下では、温度計が50℃を振り切る酷暑ですが、冬場は−20℃くらいまで下がります。年間降水量は400mmくらいあるのですが、それは夏の終わりから秋にかけての短い時期に集中豪雨となって一気に降ります。その豪雨が柔らかい黄土層を削り取って、ガリ浸食を形成し、いたるところ深い谷を穿つのです。雨季が終わるとまた晴天が続き、高原はどんどん乾燥してゆくので、雪が降っても積雪量は少なかったのですが、なぜかこの年は20センチ、30センチと積もりました。



童謡にもありますが、犬はどうして雪が好きなんでしょうか?雨が降ると絶対に部屋から出ないなつめも、朝起きて雪を見ると、喜び勇んで外に飛び出して行き、まだ誰も足を踏み入れていない雪原を転げまわって喜びます。村人はこんな時期には誰も畑には出ないので、私もなつめと一緒になって、雪遊びを満喫した年でした。