なつめものがたり その6

2005年に北京からこの地にやってきて、その後5年ほど、私は村々を廻って老人たちの記憶を聞き取り続けました。訪問した村は100を越えます。取材した人は2010年の段階でおよそ300人。公共交通機関などもちろんないので、徒歩、あるいは村人のバイクに乗せてもらって廻りました。

それを、2011年に本にまとめることが決まったので、2010年というのは、村からあまり外に出ないで、編集作業に没頭していました。おかげでなつめと一緒にいた時間は特別に長くて、毎日毎日裏山の段々畑に出かけました。



なつめは直回転が大得意です。ものすごい勢いで、砂煙をけたてて走り回り、ほんとうにうれしそうな顔をして帰ってきます。犬にもそんなに快不快の感情があるとは初めて知りました。




私が外出しないので安心したのでしょうか、この頃から、お得意の無防備なポーズでうたた寝をすることが多くなりました。今もこのスタイルは変わっていません。

*老人たちの証言を記録した、『黄土地上来了日本人』(黄色い大地に日本人がやって来た−全文中国語)は、2011年、東京大学東洋文化研究所より刊行され、同研究所より、国内外の図書館と大学などに寄贈されました。
やや内輪誉めになりますが、こうして本にまとめることができたのも、信濃むつみ高校が、私の活動を物心共に支援してくれたおかげで、心より感謝しています。
いずれ、日本語に翻訳したものを出版する予定です。