なつめものがたり その11

1ヵ月後の5月14日、初回と同じ方法同じコースで北京に向かいました。動物病院は市内北部にありましたが、幸運なことに、高速道路を出て、そのまま首都高速に乗り換えて、まさにその高速沿いにあったため、最短の時間で行くことができました。これがもし、中心部だったりしたら、高速を出てから膨大な時間がかかり、絶対に日帰りなどということは不可能でした。北京は街が巨大なのと、交通渋滞がヒドイからです。

二回目の予防接種を射ち、他にもいろんな検査がありました。今回は私も余裕があったので、周りをいろいろ観察できましたが、ここは恐らくは、北京でも一二の施設でしょう、“お客さん”を連れてくる人の、服装や持ち物がまず違いました。“患者”も、もちろん犬だけではなく、猫やウサギ、小鳥などさまざまで、私のように国外に連れ出す人もちらほら。猫をアメリカに連れてゆく人、犬をドイツに連れてゆく人などなど、あぁ豊かになったんだなぁとしみじみ思わされました。

村にいれば、年寄りなど病気になっても医療費が払えず、安い投薬で“その時”が来るのを静かに待つばかりという人がほとんどですが、ここ北京では、犬の病気の治療のために入院させ、手術を受けさせることができるのです。村では、犬は番犬でありペットではないので、怪我でもして役に立たなくなれば、谷に捨てられるのがフツーのこと。こんなところにも、格差の問題ははっきりと見て取れるのです。


さて、今回もてきぱきと事は進行し、同じように張さんの車に飛び乗って太原に向かいました。なつめはもうこれでイヤな目に会わなくてすむとわかるのでしょうか、おなじみのリラックスポーズでうたた寝です。


翌日昼前に、太原のペットショップに迎えに行ったら、こんな“ムンク犬”になっていました。いつもなら、広大な黄土高原を自由に駆け回り、夜は私の部屋の中すべてが寝床みたいなもんですから、よっぽど辛かったんでしょうね。


磧口からの迎えの車を待つところです。私もここまできて、ほんとうにホッとしました。あと半年ほど村にいて、年末には日本に連れて帰れます。