なつめものがたり その2

なつめが私のところにやって来たのは、2007年12月7日のことです。私はその頃、近隣の村々を廻って、日中戦争当時の記憶を持っている老人たちを探して、聞き取りをしていました。

この日は、工農庄という村に住む80歳の薛老人を取材したのですが、帰りがけに、お孫さんから「犬は好きか?」と聞かれたので、「好きだ」と答えると、いきなり茶色の毛糸玉みたいなものが、私の手の上にトンッとやって来たのです。私の置かれている状況からいって、絶対に飼えないと断わったのですが、聞く耳も持たず、むりやり“押し付け”られたのです。もらい手がなくて困っていたのでしょう。よく見てみると、特別にかわいい子だったので、いずれもらい手は見つかるだろうと思って、連れて帰りました。



ところが、女の子だったのが災いして、なかなか行き先が決まらなかったのです。そうこうしているうちに私も“情が移って”、これも何かの縁かと思い、上の写真の頃(生まれて半年くらい)には自分で飼うことを決心しました。ここから、なつめと私との“数奇”な暮らしが始まったわけです。


当時私は磧口という、黄河の畔にある村に暮らしていました。写真は、黄河の支流の秋水河で、黄河に合流するすぐ手前のあたりです。散歩には毎日欠かさずに出かけましたが、とにかくものすごく活発な犬で、ごらんのように、空を飛ぶこともできるのです。