次なる国境をめざして その3


船に戻ってまた5分くらい乗ると、今度はベトナムの税関です。ここもフローティングオフィスでしたが、後方の建物は、川岸に建っています。カンボジアベトナムの国力をまざまざと見せつけられるようで、ちょっと複雑な気持ちに。

ここで今度はベトナムの入国スタンプを押してもらうわけですが、つまり私たちはすでに、カンボジアベトナムの国境を越えたことになります。ここでは、メコン川の支流に国境線が通っていたわけです。

ちなみに、この税関の建物の格差を見て考えることが多かったのですが、帰って来て、アジアのひとりあたり名目GDPというのをネットで探ってみました。1位はマカオ、2位はシンガポール、3位香港、4位日本です。ベトナムは18位、そしてカンボジアは最後から2番目で24位です。(最下位はネパール)
カンボジアGDPがなぜこんなに少ないかというと、それは1970年から20年ほども続いた内戦の影響なのです。カンボジアなど、いったいどこにあるのかすらよくわからない国のことなんか、日本とは関係ないと考えるかもしれませんが、現代世界の中で、“無関係”の国や地域など存在しないでしょう、ましてやアジアで。私自身そのことがとてもよくわかった今回の旅でした。

さて、ベトナム税関では、ベトナムの船に乗り換えるために30分ほど待たされました。ここには、ちょっとしたスナックなどの売り場もあり、イスやテーブルがあってコーヒーを頼むこともできました。私は久しぶりに、甘いベトナムコーヒーを飲んで、ホッと一息です。ベトナムコーヒーというのは、ミルクではなく、練乳を入れるので、甘くてとても濃厚な味がするのです。


ベトナム側に入ると、川で魚を採っている人の風貌もガラリと変わります。カンボジアはそのほとんどが、クメール人で、浅黒くて、比較的彫りの深い顔立ちですが、ベトナムはキン族といって、ずっと日本人に近い顔つきになります。そして、被り物も変わるのです。カンボジアは、クロマーという大判のスカーフをターバンにして頭に巻いたり、首に巻いたりしていますが、ベトナム人は、お馴染みのノンラーという、バナナの皮で作った三角帽子や麦わら帽子を被っています。


メコン川には、波というものがないので、船は一点だに揺れることはなく、こんな感じでのんびり風景を楽しむこともできます。


ベトナム領に入ると、川を渡るフェリーがものすごく多くなります。橋を渡るのと同じ感覚なのでしょう。こんな渡し船が縦横に行き来していて、行ったり来たりと大忙しです。ここでも人々の足は、老若男女を問わずバイクです。