アジアへ! その4



1日ホテルで寝ていた翌日、私は人と会うために、マレーシアの象徴ともいわれるペトロナスツインタワーに出かけました。このビルは国営の石油会社ペトロナスが建設したもので、高さ452m、88階建てです。1階には世界の有名ブランドの店が軒を並べ、41階の連絡通路と86階の展望デッキには入ることができます。真下から見上げると大きすぎて、全体がよく見えませんでしたが、このビルは私が泊まっているホテルからもよく見えました。





ビルに隣接して、ISETANがあったので、私はおなかにやさしい食べ物でもないかと思って、中に入ってみました。1階が食品売り場になっていて、そこはもう日本のデパートとほとんど変わりがなかったのです。空路はるばるやって来た、だいこんやほうれん草もありました。ましてや、カップラーメンと寿司は、今やアジア共通の食品になりつつありますね。とにかくどこへ行ってもあります。食の世界のグローバル化は果てがないようこです。ここには寿司職人がいるカウンターもあって、日本人駐在員の家族なんでしょう、おばあちゃんがのんびりお茶など飲んでいました。




すぐお隣が市民公園になっていて、熱帯樹林の生い茂る中、極彩色の鳥たちがさえずり、大きな昆虫たちが地面をよこぎり、湿った濃密な空気の中で、私はしばし“アジア”に浸ることができました。いえ、正確にいうと“南アジア”ですね。ここですでに私の“アジア観”がいい加減であったことがわかりますね。日中だったので人はほとんどいなかったのですが、ビルがライトアップされる時間になると、きっと市民や観光客で大賑わいになるのでしょう。まわりにはおしゃれなレストランも開店準備に忙しそうでした。


用事が出来て急遽マレーシアに来たので、なんの予備知識もなく、ネットで最新情報を検索する余裕もありませんでした。華人が多い街なので、きっと中国語も通じるだろう、もしかしたら人民元も使えるのではないかと、とんでもない誤解にまみれてやってきた私の“アジア観”は、ことごとく粉砕されたのです。人気のない公園のベンチでようやくほっと一息つき、日本に帰ったらマレーシアの歴史を少し勉強しなければと、樹間のペトロナスタワーを眺めながら、しみじみ思った私であります。