甘粛の旅 その12

その後私は郎木寺→夏河→蘭州へと来た道を戻り、蘭州で運よく翌日のチケットが手に入り、無事に村に戻りました。ちょうど10日間の旅でした。

私もずいぶん長い間、ずっと黄土高原の小さな村に留まっていたので、今回久しぶりに“外地”に出た甘粛の旅は、いろいろ考えさせられることがたくさんありました。

シルクロードのオアシス都市蘭州には、古来より、無数の人々が行きかい、モノが集散し、文化が交じり合い、そして文明が発展してきました。回族も東郷族も漢族もチベット族も、そして海外から仕事でやってきて滞在している人も留学生も観光客も、みんな当たり前の顔して、今もモザイクのように街を彩り、何千年という長い長い時間を共に紡いで来たのです。

ひるがえって、昨今の日本でときどき耳にする、ヘイトスピーチに代表される“排外主義”は、いったいなぜ生まれてくるのでしょうか?“文明”の反対語が“野蛮”だとすれば、「外国人は帰れ!」「日本を外国人から守れ!」と叫んで恥じない彼らは、文明からは自ら遠く隔たった“文明孤児”への道を突き進んでいるのではないかと、私はとても心配になるのです。

(この項おわり)