甘粛の旅 その6

さて、いよいよ今回の旅のほんとうの目的地「甘南」へ向かうことにしました。中国のネットで、甘粛省の南部に「甘南チベット族自治州」というのがあるのを見つけたのです。チベットはもともと行きたいとは思っていたのですが、あまりに遠く、特別な手続きを踏み、しかも高額なツアー料金が必要ということで行かれなかったのですが、今回いわば“ミニチベット”を訪ねてみようと思い立ったわけです。

自治州の中心地は夏河(シャーハー)という町で、そこには、ラプラン寺というチベット仏教の有名な寺があるのです。



蘭州から高速バスで226Km、3時間ちょっとで夏河に到着します。町は、“観光による町おこし”政策の対象になっているので、行政からの援助があり、街並みもきれいに整備され、比較的新しい“観光地”になってはいるのですが、それはそれで、ここにはもっと奥が深いところで、チベット文化の花が咲き乱れているのです。ちなみに、写真の後方の山々は4000m峰です。



これがラプラン寺の全景です。ここに現在1500人くらいのラマ僧が修行しているそうですが、出家していない人もいるので、かなりの数の人々が暮らしているわけです。もちろん学校から図書館から病院から、普通の共同体の中にあるものは、警察以外ほぼすべて整っています。





寺の周囲には、大小のマニ車という、中に経文が納められている仏具があって、ラマ僧も一般のチベット人も、毎日1回、人によっては2回、3回と、グルグルそれを廻しながら巡礼をするのです。




そしてこれは「五体投地」といって、両手を合わせて跪き、その両手を前方に投げ出してその後に両足を引き寄せる、つまり尺取虫のような移動の仕方で仏に祈りを捧げている姿です。これで寺院の周りを巡礼する人もいるのです。いったい何時間かかるのかわかりませんが、これはラマ僧だけではなく、一般の人、例えばジーパンにトレーナーという若者も決して少なくないのです。

映像では見たことがありましたが、あつい吐息が聞こえるような距離で、彼らのあまりにも“過酷な祈り”を見ていて、私は信仰に縁がない人生を送ってきたなぁとしみじみ思わされました。おそらくは私だけの問題ではなく、日本人一般といってもいいでしょう。



町中にときどき羊がウロついているのですが、これは子供が病気になったときなど、お寺にお金を払って護符をもらい、治癒を祈願して羊に付けるのだそうです。この護符を付けた羊は生涯殺しても傷つけてもいけないそうです。