山のお正月 その7


明けて初八(春節から八日目)が、賀家湾村の廟灯会の日です。天から降ったか地から湧いたか、日が暮れ始めるごろ、村の広場に次から次へと人が集まってきます。


この右側にあるのが、村の守り神(あんまりそれらしくないですが)で、廟から広場の方に移してあって、みんなそこに供え物をして、村の平和と家内安全を祈願します。





すっかり日が暮れてから、爆竹を鳴らし、楽隊を先頭に、ろうそくを持った村人たちが広場を出発し、近くにある廟に向かいます。特に、子供たちが中心です。




村の人口は、本来なら1000人ほどいます。ところが、みな出稼ぎや就学で村を出てしまうので、実際に村で暮らしているのは2割にも満ちません。ほとんどが年寄です。村の廟灯会は、1年に1度、村を出た人たちが故郷に帰り、土地神様にお詣りをし、家族そろって食卓を囲む、とても大切な日なのです。


広場の舞台では、晋劇も奉納され、この日は深夜まで村のあちこちから楽しげなざわめきが聞こえてきます。

廟灯会が終わると、翌日には人々は続々と山を下り、村はまた静かな夜を迎えます。元宵節(春節から十五日目)までがお正月なのですが、町で働いている人は仕事も始まります。村に残った人々は、春までの2か月間ほど、陽だまりでおしゃべりをしたり、マージャンやトランプをしたりしながら時間を潰し、今年もまた、“黄色い大地“に種を蒔く日々を待つのです。おそらくは、何年も、何十年も、いえ百年以上昔にも、村には同じような時間が流れていたことでしょう。
(おわり)

*今日は、東日本大震災から4年目にあたります。あの日も私はこの村にいたのですが、部屋にテレビもなく、「日本に大きな海嘯(hai xiao)が来て、たいへんなことになっているよ!」と村人が教えに来てくれました。あのときの映像はこちらでもたくさん流れたようです。実は私は、いまだに一度も見てないのですが、痛ましくて見る気になれません。いまだに冷たい海の底を漂っているたくさんのご遺体があるようですが、せめて、家族の元に一日も早く返してあげたいですね。心よりご冥福をお祈りします。