H7N9

突然の復活ですが、鳥インフルです。一昨日は山東省、昨日は台湾でも感染が確認され、今日現在で、感染者が100人を越え、死者も20人を越えました。

思い出すのは、今から10年前、700人を超える死者を出したSARSです。あのとき私はちょうど北京で中国語の勉強をしていて、戒厳令並みの街の様子をつぶさに見てきました。留学生は続々と帰国し、クラスで日本人で残ったのは私ひとりとなりました。私が住んでいたアパートの、窓から見える建物でも感染者が出て界隈は封鎖され、食料品の買い出しにも出られない日々が続いたのです。

今回のH7N9型鳥インフルも徐々に北方に広がり始めていて、それには渡り鳥が関係しているのではないかといわれています。

で、山の分校がある山西省黄土高原の当地にも、実は野鳥はとても多いのです。黄土高原というと、なんとなく、砂漠みたいに乾燥して荒れ果てた土地を想像される方が多いと思うのですが、それは“偏見”です。分校のあるあたりで、年間降水量は500ミリほどあって、松本市とはそれほど大きな差はないのです。ただし、その500ミリが夏の終わりから秋にかけて、一気にまとまって降るので困るのです。もう少しバラけて降ってくれるといいのですが、数千年数万年の“伝統”ですからどうしようもありません。

で、野鳥の件ですが、どんな鳥がいるかというと、個体数ではもちろんスズメが最も多いです。その次にハト。それから、キジがけっこういます。今はちょうどヒナが孵って、高原の段々畑で一生懸命飛ぶ練習をしているところです。こちらの人は食べるという習慣はないようで、みなおっとりしています。これらは留鳥なので、とりあえず、鳥インフルの危険性は少ないと考えていいでしょう。

問題は渡り鳥の方で、当地は冬場は氷点下20℃(昔は30℃くらいだったらしい)にもなるので、秋の終わりには暖かい南の方に渡ってゆく鳥も多いのです。よく目にする鳥で、日本ではほとんど見ないものに、カササギとヤツガシラがいます。今の時期は朝っぱらからあちこちで、うるさいくらいに鳴いています。

カササギは、日本では九州の一部に生息しているようですが、中国北部にはほんとうに多い鳥です。日本のカラスのようなものです。
大きな巣を作ることで知られていて、分校のすぐ近くのポプラの樹の上にも、三段重ねの串だんごみたいな巣があります。

ヤツガシラというのはこんな鳥です。ブッポウソウの仲間らしく、鳴き声が、ポポポ、ポポポと特徴的で、村人はみな「ポポ」と呼んでいます。近くのヤオトンの門の屋根の崩れた穴に、去年一昨年と営巣しましたが、今年もきっと同じ所で繁殖するのではないかと思います。下の2枚の写真は去年の6月のもの。どこかにトンッと降り立ったときなどに、頭の冠をパッ!と広げます。そのたびにオッ!と思います。

今日今年初めてツバメを見ました。ツバメもものすごく多いです。ときどき部屋の中に入ってくるので気をつけなければなりません。他にもカッコーとかキツツキとか名前のわからない渡り鳥が何種類かいますが、これらが運んできたウィルスが、養鶏場のニワトリなどの家禽類に感染して、それが人に感染するのではないかというのが、今のところわかっている経路のようです。

分校のある賀家湾村には養鶏場はないのですが、隣村の劉家庄で3000羽くらい飼っている人がいて、彼はその卵をカゴに担いで近隣の村々を売り歩いています。すでに顔見知りのおじさんだから、こないだも「気をつけてね、マスクして作業した方がいいよぉー」といったのですが、なんていうか、まったく無頓着で、そのうちに「鳥インフル山西省で感染を確認」なんてニュースが日本のメディアでも報道される日が来るのではないかと、実はかなり心配の種が尽きない日々を送っているのです。