9月26日 国境の河を遡る

チャーターバスで河口というところまで行き、そこから鴨緑江を遡る遊覧船に乗りました。これも毎年同じコースです。今年はあいにく雨が降ったりやんだりの悪天候でした。北朝鮮の岸辺ぎりぎりまで接近して航行するのが、いわば“サービス”のようですし、当然、北朝鮮と中国とで暗黙の了解があるのでしょう。川にひかれた国境というのはどういうふうになっているのか知りませんが、おそらくは川の真ん中が国境、その両側何メートルかがどちらの国にも属さない地帯なのではないでしょうか?船はあきらかにその緩衝地域を越えて、北朝鮮側に越境し、岸辺で洗濯をしている人や、川筋の道を歩いている人、自転車に乗っている人の顔もはっきりわかります。こちらが手を振ると手を振り返す人もいます。ただし、彼らは、私たちは中国人だと思っているわけで、もしも日の丸でも掲げられていたら、ことはそんなのどかなことではありません。

そういった問題も考えながら1時間の船旅。日ごろ北朝鮮というと、すっぽりとベールに包まれた謎の国ですが、こうやってじっさいに声が届きそうなところまで来て彼らと“接して”みると、それはやはり、“貧しい”けれども、いずこも同じ農民たちの姿です。

その後再びバスに乗って「一歩跨」というところまで行ったのですが、この夏から秋にかけての大雨のため、一歩跨ぎどころか、女鳥羽川くらいの川幅になっていました。ここは本来、ほんとうに一歩で北朝鮮の土が踏める、有名な“観光ポイント”だったのです。国境を表す鉄条網もなぎ倒され、その向こうに荒れ果てた農地が広がっていました。今年もまた食糧難で、一般市民、農民たちにとっては厳しい冬になることでしょう。観光地を訪れる気分で、国境を見はるかす旅というのは、いったい何なんだろうと、改めて考えてしまいました。

北朝鮮の人達が大雨の中でも傘もささずに普通に歩いている姿がとても印象的でした。さす傘がないのか、さす気がないのか、どっちにしろとても物哀しい光景でした。河一つ、海一つで人の生活がまるで変わってしまう事を考えると、国境や国っていったい何だろう?と思いました。

*船で国境を越え北朝鮮へ入国?をした。古びた建物は、率直に言うと唖然とした。目の前なのに中国と北朝鮮の風景が違いすぎてびっくりだった。