恵みの雨が降りました

実をいうと、雨が降ったのです。当地は春以降ほとんど雨が降らなくて、あやうく「旱魃」の被害が出るところでした。井戸の水も涸れはて、新しくできた共同水道の水も使い切り、これ以上降らないと、まだ成長が始ったばかりの農作物は、無残な立ち枯れ状況を示すところでした。

ところが、生徒たちがやってくる前日に、かなりまとまった量の雨が降り、その後も晴れたのは1日だけで、あとは毎日ぱらぱらと、傘がいらない程度の雨が降ったり止んだりの日々だったのです。しかし、せっかくの旅に雨なんて、と思われるかもしれませんが、これでむしろ良かったのです。なにしろそれまでの天気といえば、日中は温度計の40℃のメモリを一気に振り切り、30分も外で作業をしていたら、間違いなく熱中症になるだろうという厳しさだったのですから。まったく全身が直下型太陽光ドライヤーでバリバリ焼き焦がされるほどの激暑でした。そして何よりも、農民たちの今年の収穫が保証されたわけで、正真正銘“恵みの雨”となったのです。

それで、翌日夕方、写真が濡れるので内側のヤオトンの庇の下に場所を移しました。作業を始めるとやっぱり“現場監督”がやってきます。70歳を越えるじいちゃんですが、やっぱり女の子たちの前で“いいかっこう”したかったのかしら?

こんな感じになりました。後ろは、以前の小学校の教室です。

今日は、用意したカマドでカレーを作りました。水がないので、準備は私の部屋の方でやり、このカマドでぐつぐつ煮込んだだけだったのですが。相変わらずこのおばちゃんが付きっきり。

ぼうやもお手伝い。

完成したカレーはなかなかの美味で、周りにいた村人たちにも勧めたのですが、遠慮して誰も食べません。山西の人たちは概して恥ずかしがり屋で遠慮がちだといわれています。それに、「食」に関しては特別に保守的で、これまでみたこともないようなものには手を出したがらないのです。これは私の経験上よくわかっていたので、無理には勧めませんでした。

そこへ“怪しい”じいちゃんがやって来ました。実は村の人気者ですが、なぜこんな坊さんの衣装なんか持っていたのか、私もわかりません。
「じいちゃん、カレー食べる?」「モゴモゴ、ゴニョゴニョ‥‥」

「おいしい?」「好吃!(ハオチー=おいしい)」。じいちゃんはおかわりもたいらげて、またゴニョゴニょいいながら去ってゆきました。

(7月11日)